第二話【綿流しの夜】

 


「……富竹さんは、喉を掻き毟って。……鷹野さんは、岐阜の山中で焼死体として発見される……だったよな?」
「……? え、えぇ……」
 あれから、少し時間が経って、圭一は腕を組んで私に尋ねた。
 先ほど、私が富竹や鷹野に言った事をそのまま聞き返した感じだ。
「……今年のオヤシロ様の祟りってのは……また、随分と不可解だな。……鷹野さんは雛見沢から離れたところで……富竹さんに至っては喉を掻き毟って死んじまうんだろ?」
 圭一は考える仕草を見せたまま、話を続ける。
 私は祭具殿の階段に腰を下ろして、顔を上げた。
「……確かに、そうだけど……。でも、起こるものは起こるわよ? オヤシロ様の祟りは何度繰り返しても一致するもの」
 圭一が関わる事で、これまでの祟りは多少の変化を見せてはいた。
 しかし、結局……事件は起こっている。
 ダム工事現場監督は死に、沙都子の両親も……私の両親も……祟りに遭って消されている。
 去年は変化が著しかったが、結果として叔母は死に、悟史は一時的とは言え行方不明になっていた。
 ……つまり、この予定調和は……小さな変化を見せているようで、実のところまったく違いがない。
 オヤシロ様の祟りは、「毎年起こった」のだから。
 ……だから、今年も……きっと起こってしまうだろう……。

「……なぁ。喉を掻き毟っちまうってことは、富竹さんはL5を発症しちまうって事だよな?」
 考えをまとめ、圭一は顔を上げて私を見た。
「えぇ、そういう事になると思うわ。……尤も、どうしてそうなってしまうのかは謎よ。そもそも、富竹は雛見沢症候群が発症しないための薬物を打っているはずだもの」
「……」
 私が答えると、圭一は再び思慮の海へともぐっていった。
「……圭一は……一体、どんな事を考えているのでしょうか……?」
 それと同時に、羽入が私の背後へやってきた。
 私は振り向かずに、口を開く。
「……私には分からないわ。……でも……そうね。……圭一なら、この状況を打開する方法でも考えているんでしょう。……今まで、ずっと……ずっと、そうだったんだから……」
「……梨花……」
 ……もう、圭一にかけるしかない。
 私は……今まで何度も抗ってきたけど、駄目だった。
 私の力じゃ、昭和58年は越えられない。……今、頼りになるのは……圭一だけだ。
「……でも、ボク達だって……今まで、数えきれないくらいに……方法を考えてきたのです……。……圭一は、それでも……打開策を考案してくれるでしょうか……」
「……期待はしない……。……って、それじゃ今までと一緒よね。……私は、圭一を信じるわ。彼なら、必ず何とかしてくれるって、ね」
「……」
 羽入は沈黙したが、満足そうな笑みを浮かべて私の隣へ移動した。
「なら、ボクも圭一を信じるのです。……梨花をここまで強くしてくれた圭一に……ボク達の運命を委ねましょう」
「えぇ……そうね」
 私はそれだけ言って、空を見上げた。
 ……夜空には月が出ていて、回りを星が輝いている。
 とても……綺麗。
 心が、より晴れ晴れとしていくのが分かった。 

「……梨花ちゃん」
 圭一の声に、私は視線を彼に向けた。
「……ふふ……その目を見れば言わなくても分かるわ。……何か……思いついたようね」
 その、圭一の瞳は輝いていた。
 それは……そうね。まるで、小さな子供が難解なパズルに挑戦して……それを解き明かした時に見せるような、無邪気な瞳。
 圭一は、この状況すらも楽しんでいるようだった。
「……へっ。俺はイレギュラーだってんなら、それでいいさ。俺は、俺の役割を全うする。昭和58年でもイレギュラーであり続けてやるさ」
 瞳の輝きは色あせる事なく、輝き続ける。
 私の心は落ち着き、彼を信じる事が正解であることを改めて理解した。
「俺の思いは五年前から変わっちゃいない。……雛見沢を守る。たとえ、どんなに危機的な状況に陥っても……俺は、絶対にあきらめない」
 ……この四年間でくすぶっていた圭一は……この五年目の雛見沢で、奇跡を起こすに違いない。
 確信にも近い気持ちが、私の中に芽生えた。
 何の根拠もないけれど。……それは、強く……根付いていたのだ。
 圭一はぎゅっと手のひらを握り、胸元へ腕を上げ、ゆっくり私へと向けた。

「……見せてやるぜ。大番狂わせの、大逆転劇ってやつをな!」

 そして、力強く……私に告げた。
 血液の流れが早くなる。体が、火照る。
 ……胸が、躍った。

「見せて頂戴。……百年を生きた魔女に……前原圭一が起こす奇跡という業を」
 私は小さく笑顔を見せた。
 圭一は、あの無邪気な瞳で私を見据え続ける。……それが、とても心地よく、気持ちを高揚させる。
 ゲーム盤の席に着いた私の隣には、羽入と……圭一。
 まだまったく見えぬ敵となる存在も、まったく怖くは無い。
 ……何故って? ……くすくす。
 圭一は……駒であるはずのこの雛見沢という舞台の住民を、すべてプレイヤー側へと引っ張りだしてしまいそうだから。
 私は過去、……沙都子を救おうと雛見沢全てを巻き込んで戦いを挑んだ圭一を忘れない。
 彼はあの時、確かに雛見沢と共に戦ったのだ。
 今の圭一は……あの時と、同じ目をしていた。
 ……つまり、「舞台」が味方となる。……これ以上の勝算が一体あるといえるのかしら?
「任せろ」
 瞳の輝きは、いつの間にかメラメラと燃える炎になっている。
 やる気は十分のようね。……怖いもの知らずとは、まさに今の彼の事を言うんでしょう。
 圭一は一旦目を閉じてふーっと息を吐き、ゆっくりと開いて私へ視線を向けた。
「梨花ちゃん、富竹さんはどのあたりで毎回死んじまうのか、予想できるか?」
「えぇ。可能よ。雛見沢と興宮を結ぶ山道。その、ちょうど中間あたりかしら」
「……そうか。……それじゃ、すぐにでも行動を起こした方がいいな。……打ち上げには戻れないから、皆には言っておいてくれ」
「……そう。分かったわ」
 私が返すと、圭一は私の頭を一撫でした。
 不意を突かれて真っ赤になる私に、笑顔を見せる。
「また今度、今日の埋め合わせしような」
 そして……いつもの圭一の表情で、……声で。……私に、言った。
 私が小さく頷くと、圭一は瞳を閉じて眼を変えた。それから、足に力を込めて……。
 ……私の傍を、風が吹き抜けた。
 
 もう、そこには私と羽入以外の誰も居なかった。
 夜の虫が、小さく鳴いていた。

「梨ぃー花ぁー!」
 ……しばらく、その場でぼーっとしていたら……沙都子の声が聞こえてきた。
 それに反応して、自然と声のもとへ振り返る。
「もぉ……こんな所に居たんですの? いつまでも戻ってこないし、おトイレに行っても誰もいませんでしたから心配したんですのよ!」
 沙都子は私に駆け寄りながら、少し怒っている口調で言った。
「みぃ……ごめんなさいなのです。ちょっと、外の空気が吸いたくなったのですよ」
 私は階段に両手のひらをつけて、ぴょんとジャンプして地面に着地した。
「それもいいですけど……一言でも、私達に言ってくださいまし!」
 今日は珍しく沙都子は口調が厳しかった。
 そこにちょっぴり違和感を感じたが、それもすぐに消えた。
 ……そうか。今日は、綿流しの夜なんだ。
 沙都子は昭和58年の綿流しの夜、誰が死ぬのかを知らない。……心配して、当然……よね。
「まったく……圭一さんも姿が見えませんし……。梨花、心当たりはありませんこと?」
「圭一は……やることができたので、どこかへ行ってしまったのです」
 最初沙都子は怪訝な表情を浮かべたが、はっとしたようにその意味を理解したようだった。
「……そう、ですの……」
「……圭一は、頑張っているのです。沙都子、ボク達も……頑張らなきゃ、いけないのですよ」
「分かっていますわ。……逃げたり、しませんでしてよ」
 それだけ言って、少ししてから「圭一さんにはにーにーを見つけてもらった恩もありますしね!」と慌てて付け加える沙都子がかわいらしかった。
 私は背伸びをして、沙都子の頭を撫でてあげた。
「な、何をしますの……」
 沙都子は少し慌てた様子を見せたが、すぐにおとなしくなった。
 私はそのまま頭を撫で続け、ひとしきり撫で終わってから……ぎゅっと抱きしめた。
「ふぇ……っ? り、梨花……?」
 さらに慌てだす沙都子の頭を優しく一撫でだけした。
 それで、落ち着きを取り戻した沙都子に……小さく、告げた。
「ありがとう。……とても、頼もしいのですよ」
 そして、ゆっくりと離す。
 沙都子は私を見つめた後、にっこり笑った。
「仲間ですもの。当然ですわ!」
 私も、つられて笑顔になる。
 沙都子の笑顔って……人を勇気づけるちからがあるみたいね。……無意識に、笑顔になっちゃうくらいだから。
 圭一は何かを思いついたはず。……彼は、雛見沢を守る為に全身全霊をかけて戦うだろう。
 ……負けてられないわ。
 私も……沙都子も……。
 ……魅音も、レナも、悟史も、詩音も。……みんな、みんな雛見沢が大好きなんだ。
 だから、戦う。
 悲しい出来事を何度も味わってきたけれど。
 ……それに負けないくらいに、素敵な出会いをくれたこの雛見沢を。
 
 ……みんな、守りたいって思えるから。

 だから……戦った。五年前の、あの時……この場所で。
 そして、圭一はまだ戦ってる。
 その手を取らなくて、どうして雛見沢の住民といえようか。
 私たちは一人じゃない。この村は、全体が一として成り立つ村。
 ……そう。

 ……初めから、何も恐れる必要などはなかった。

 ……村のすべての人が、私たちの味方で……仲間なんだから……!

 この素晴らしい世界を。……素晴らしい場所を。
 誰にも汚させたりしない。させるものか。
 ……抗うんじゃない。
 戦ってやる。
 私は……もう、昔の私じゃないんだから……!
「梨花……?」
 ……私の頬には、滴が……ひとつあった。
 服の袖でそれをぬぐい、沙都子へと視線を向ける。
「……沙都子。頑張りましょう……。皆一緒なら……きっと、越えられるから」
「……、……えぇ。そうですわね」
 沙都子は、茶化す事なく返してくれた。
 ……頬を伝う滴が……また一つ、増えた。

「……梨花、今日は……もう、帰りませんこと……? ……風邪、引いちゃいます事よ」
 沙都子は、私を気遣ってか……帰宅する事を勧めた。……確かに、もうかなり夜が深くなっているようだった。
 ちょっぴり、眠気もあった。……この幼い体は、どうしても睡眠欲がぬぐい切れない。
 ……それに、もう随分外に居る。……沙都子の言うように風邪をひいてしまうかもしれない。
 この時期にそんな状態に陥るのだけは回避したかった。
「……そう、ですね……」
 私は小さく呟いて、沙都子の横に並んで歩き出す。
 沙都子は、私に合わせて歩いてくれた。
 夜空を見上げて……何度も、思う。
 ……今夜は……私も、何かしたかったけれど……。
 ……ごめんなさい……圭一。
 貴方に……任せるわね……。
  
 ……今は、残念だけど何もできそうにない。
 圭一を、信じよう。
 彼なら……きっと、なんとか……して、くれるから……。

 まだ騒ぎ声の聞こえる集会所へ、帰宅の挨拶に向かう。
 複雑な気持ちのまま、私は沙都子と共に集会所へ戻る。
 サンダルを脱いで、縁側の廊下を通って宴会場へと足を運ぶ。
 ……そこは、綿流し実行委員達の笑い声と、お酒臭さが充満していた。
 これは、沙都子に言われるまでもなくギブアップだったかもしれない。私達は、早々に魅音のもとへ移動した。
「ぉ、梨花ちゃーんやーっとかぇってきたかぁ。ずぃぶん長いトイレだねぇ〜」
 ……完全に酔ってる。
 貴方、少しは未成年だって事自覚した方がいいわよ……。
「み、魅音さん……。あの、私たち、そろそろ帰りますわね。もう、時間もだいぶ遅くなってしまいましたから」
「ぅん? あー、そっかそっか。それじゃ、誰かつけようか? 雛見沢なら心配ないとは思うけど、夜道に女の子二人は危ないからねー」
 ぐぃっとジョッキを傾けて、ぷはー、と気持ちいい飲みっぷりを披露しながら魅音は提案した。
 だが、魅音の言う通りここは雛見沢。……その心配はないだろう。
 沙都子も同意見のようで、私に小さくうなずいてから断っていた。
 ……好奇心でちょっとあたりを見回してみる。
 ……詩音も悟史もどうやら未成年にあるまじき行為を魅音同様この場でどうどうとしているようだった。尤も、悟史が故意にそうしたとは思わないが。
 そしてそれに誰もツッコミを入れない集会所の面々を見て、ちょっぴり呆れた。
 うちのあぅあぅは私がワインを飲もうとするとすぐうるさくなると言うのに。
 ……まぁ、そんなことはどうでもいい。
 沙都子は話を終えたようで、自分たちの使った食器を片づけに行った。
 ……こういうところはしっかりしているのが沙都子らしい。
「……、……、……っぷはー! いっやー、キンッキンに冷えてるからおいしいねー!」
 ……それにしても、魅音の飲みっぷりもなかなかね。
 ……横の空き缶の数を見て明日が大丈夫か少し心配になったけど。
「……魅ぃ、そんなに飲むと明日頭がにゃーにゃーなのですよ?」
 ちょっと悔しかったので、抑制させる意味でも口を開いた。
「ぁー、大丈夫大丈夫。監督にお薬もらうからさぁー」
 しかし、あえなく撃沈。……魅音の頭の回転の速さにはかなわないようだった。
「……みぃ、そうですか……。でも、飲みすぎは体に良くないのです。ほどほどに、なのですよ」
「わかってるってぇ! もーっおじさんの事心配してくれてうれしいぞー!」
 くぃっ、ごく、ごく、ごく、ぷはー。
 ……羨ましくなんかないもん。
 私はワイン以外に興味なんてないんだから。
「……?」
 ……それから、室内を見回してふと思う。
 そう言えば……入江の姿が見当たらない。研究所の方に戻ったのかしら。
 ……。
 ……まぁ、あれだ。
 ……魅音、明日は……ご愁傷様……。

「梨ぃ花ぁーっ!」
 隣の役員と談笑し始めた魅音を横目に、悟史、詩音のもとから走ってくる沙都子が目に入った。
 どうやら、片付け終えてから悟史に帰宅の旨を伝えていたようだ。
 私は沙都子へと向き直り、駆け寄る。
「お片付け、終わりましてよ。さっ、帰りましょう!」
 かわいらしい頬笑みを浮かべて、私の手を取った。
「そうですね」
 沙都子に手をひかれて、私は玄関まで歩いていく。
 そして、ごちゃごちゃした下足場で自分たちの靴を見つけ、しゃがみこんだ。
「梨ー花ちゃんっ、沙都子ちゃーんっ」 
 私たちが靴を履いていると、後から自分たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
 二人で振り向くと、帽子を被ったレナが立っていた。
「みぃ、レナも今から帰りですか?」
「うんっ。梨花ちゃん達もそうかな? かな?」
「えぇ、私たちはそろそろ寝る時間ですわ。今日はちょっと夜更かししてますから」
 沙都子が答えると、レナは「そっか」と言い、靴を履き始めた。
「送っていくよ。夜道は危ないからね」
 そして、にっこりと笑いかけてくれた。
 本来レナは私たちが住んでいる家とは反対方向に家があるのだが、せっかくのご厚意なので甘えさせてもらうことにした。
 さっきはその人に申し訳がなかったので断ったが、レナはもう帰宅をするようだし、信頼できる仲間だった。
 それに、もう少し話をしたい、というのもあった。
 ……今日はあんまり皆と騒げなかったから、ね。

 風が吹き、私たちの髪を揺らした。
 ……今夜は、まだまだ……長い。
 ……何も起きない事を……切に、願うわ……。

 *     *     *


「くすくす。ジロウさんったら、私に一番最初に言った事と違ってるわよ?」
「え? ぁ、っはは。鷹野さんは記憶力がいいなぁ」
 梨花、圭一と別れた鷹野と富竹は、夜道を歩きながら会話に華を咲かせていた。
 梨花に言われた事が心の隅に引っ掛かってはいたが、二人とも話しているうちに少しずつ忘れていっていた。
 古手神社から診療所までは少し距離があるため、診療所に着く頃には先ほどの話は……鷹野には、ほとんど残っていなかった。 
「お、そうこうしてるうちに到着だ。鷹野さん、鍵を開けてくれるかな」
「あら……ほんとう。ちょっと待ってくださいね」
 鷹野は少し残念そうに診療所の鍵――カードキーではあるが――を取り出した。 
 診療所は通常の表の入口と、職員用の裏口がある。
 二人は、いつも裏口から診療所内へ入っていた。
 鷹野は取りだしたカードキーを入口横のリーダーにシュッと通し、鍵が開くのを確認した。
 富竹はノブに手をかけ、少し下におろしてからドアを奥へと押した。
 ドアはゆっくりと開く。富竹はそのまま中へ入り、ノブから手を離してからすぐにドアへと手を置いて身を横へよせる。鷹野が入ってくるのを待っていた。
「ありがとう、ジロウさん」
 鷹野はにっこりと頬笑み、富竹は少し赤面した。
 多少あわてながら、富竹は電気のスイッチを入れた。
 蛍光灯に明かりが灯り、部屋が照らされる。鷹野は明るくなった部屋を歩いていき、廊下へのドアを開けた。
 富竹は入ってきたドアのカギを閉め直し、電気をつけっぱなしのまま鷹野の後を追った。
 診療所は、夜も鷹野、入江の出入りが時々ある事や、山狗も通路を使用するため、電気はついていないが足元に小さな蛍光灯が点灯していた。
 足元が見えれば移動には困らないので、最低限の夜間への対応だった。
 鷹野、富竹はその明りを頼りに入江の診察室へと進んでいく。
「……」
 その、途中。診療所の裏口玄関から廊下へ出て、少し歩いたところで富竹は一度立ち止まった。
「……? どうかしたの……ジロウさん……?」
 それに気づいた鷹野が、富竹へと振り向く。
 明かりが足元にしかないので表情はうかがえないが、富竹は背後をじっと見つめていた。
 鷹野もつられて視線を富竹の奥へと向ける。……暗くて何も見えない。
 富竹も、鷹野の言葉に返事をしなかった。
 鷹野は怪訝に思いながら、富竹のもとへ歩み寄り、肩を叩いた。
「ちょっと、ジロウさん! いったいどうしたの?」
「……っと、はは、ごめんごめん。……ちょっと、ね。まぁ、気にしないでいいだろう。鷹野さん、二佐の診察室へ急ごう」
 富竹は笑いながら鷹野へ向き直る。
「え、えぇ……」
 富竹に言われ、進行方向へと向きを直す鷹野。……振り向きざまにちらっと富竹の顔を見ると、その表情はどこか険しかった。
 それから、数秒経たないうちに今度は富竹が、背後から鷹野の肩を叩いた。
「急ごう」
 その言葉に、鷹野の疑問は確信に変わった。
 何か、不吉なものが……自分たちに忍び寄っている。
 鷹野は、山狗は一体何をしているのか、と思いながら歩幅を広くし、カツカツとヒールの音を立てながら廊下を歩いていった。
 富竹は自身の背後に注意を向けながら、鷹野の横へと歩み出る。
 自身の任務は鷹野を護る事ではない。あくまで、入江診療所の監視役だ。護衛は山狗の仕事だからだ。
 だが、富竹は前へ出た。背後からの「危機」に、前方、後方、どちらでも対応できるように、鷹野の横へと移動したのだ。
 富竹二尉としてではない。
 富竹ジロウとして、彼は鷹野を護ろうとしているのだった。
 鷹野にも、富竹にも、普段歩き慣れている廊下がひどく長く感じられた。
 この時になって、ようやく鷹野の脳裏には梨花の言葉がよみがえってきた。
 ……今夜は、綿流しのお祭りの晩。
 オヤシロ様の祟り……一人が消え、一人が……死ぬ。
 その被害者は……富竹ジロウと鷹野三四。
 梨花は確かにそう言った。
 鷹野は、もはや気が気でなかった。山狗が護衛として居る事で完全に油断をしていたのだ。
 自分が祟りに遭うことなどありえない。……それこそ、彼女が趣向としているオカルト的な現象でも起こらない限りは。
 勿論、普段の彼女なら喜んでいたかもしれない。
 だが、今回は……今回だけは、そうはいかなかった。
 高野一二三が生涯をかけて研究を続けた、雛見沢症候群の研究。
 それを引き継ぎ、そして……ようやく、成果が挙げられようとしていた。
 消えるわけにはいかなかった。死ぬわけにはいかなかった。
 その思いが、ますます鷹野を焦らせた。
 全身は汗でびっしょりになっていた。自身が研究を続け、最も安全だと思っていたこの入江診療所が……まさに、自身の死に場所になるのではないかという……まるで確定されているかのような予感。
 鷹野は、その恐怖を全身で浴びていた。
 梨花の言葉を信じていればよかった。
 鷹野は今頃になってようやく後悔するが、今頃後悔しても遅いのだ。
 後悔先に立たず。……事前に立つものを後悔とは言わない。
 とにかく、この異質な空間から脱出するには、いくつか方法があった。
 最も簡単な方法は、廊下の窓を開けて今すぐにでも脱出すること。だが、窓にはすべて鍵がかかっている。
 内側からならあけるのに問題はない。……問題なのは、開けるまでの時間だ。
 鍵を開け、窓を開け、身を乗り出してから、脱出する。
 この工程を終えるまでに、数秒かかる。
 その間に、相手が何らかのアクションを仕掛けてこない保障はないのだ。
 ……自分は助かっても、確実に富竹は間に合わない。
 だから、鷹野はそれをしなかった。
 鷹野にできるのは、このまま何も起こらない事を願ながら、書類を回収する事しかなかったのだ……。
 
 永遠にも思える廊下を歩き続け、二人は入江の診察室へとたどり着いた。
 本来、雛見沢症候群の研究書類などは一階の入江の診察室……そのデスクの引き出しなどに入れておくことはない。
 地下の専用の場所へと格納するものだ。
 だが、今日は綿流しの実行委員会としての仕事があった入江は、早めに診療所を切り上げた後、鷹野と少し研究について話し合いをし、その時の書類をデスクの引き出しに入れて鍵をかけたのだ。
 分かりやすく言えば「時間がなかった」わけである。
 しかし、それでも話したかった「雛見沢症候群」という病気。つまり、その研究は順調に進んでおり、当事者である二人はどんなに忙しくてもその話をしたかった、という事を示していた。
 その成果を示した書類の束は、目の前の部屋のデスクに入っている。
 鷹野は診察室のドアを開け、中へと入り、電気をつけた。
 それに続き、富竹が入る。……廊下へと注意を向けたうえで、ガチャリとドアを閉め、鍵をかけた。
 鷹野は入江のデスクへと歩みより、ポケットから入江から預かった鍵を取り出した。
 それを使って、鍵付き引出の解錠を試みる。
 その作業をしながら、鷹野は富竹へ尋ねた。
「ジロウさん……後ろに居たのは……?」
 廊下を歩いている時は、しゃべれなかった。廊下は声がよく響く。こちらの会話を聞かせるわけにはいかなかった。
「……おそらく、山狗だろう。……裏口の下足場の電気が人影を映し出していた。鷹野さんには言わなかったけど、梨花ちゃんの話を聞き終わった時から……僕達はずっとつけられていてね。……それで、ここの裏口の鍵を閉めたにも関わらず、中に入ってきていたから、間違いないだろう」
 富竹は冷静に状況を鷹野へ伝えた。……尤も、鷹野に比べたら……というレベルではあるが。
 一方の鷹野は、完全に混乱していた。
 ……「山狗」が、後をつけている。
 勿論、鷹野はそんな命令を出した覚えはなかった。
 それ故に、山狗の不可解な行動が……ますます、「祟り」に結びつくのだ。
 二年前……鷹野は、山狗へと……祟りの実行を命じていたのだから。
 パニックを起こしかけていた鷹野に、富竹はその手に自分の手を重ねた。
 鷹野ははっとしたように富竹へと顔を向ける。
「鷹野さん、大丈夫。……落ち着いて。……とにかく、今は書類を回収しよう。君は、一人じゃないって事を忘れないで」
 富竹は、真剣な口調でそう伝えた。
 ……その言葉が、鷹野の緊張、焦り、その他をすべて吹き飛ばした。
 鷹野は落ち着きを取り戻し、こくりと頷いた。
 富竹はそっと重ねていた手を離し、立ち上がった。
 鷹野は鍵の刺さったままの引き出しの施錠を解除させた。
 そして、素早く引き出しを開ける。鷹野は、入江がどんな封筒に書類を入れたのかを確認していたので、すぐに目的のものを手に取った。
「ジロウさん、あったわ!」
 そのまま書類の入った封筒を富竹へと向けた。
 富竹は一度頷いて、診察室のドアへ足音を立てずに近づき、耳をぴったりとつけた。
「……」
 二人に、緊張が走る。
 富竹は耳を凝らし、気配を感じ取る能力を最大限にまで引き上げた。
 ……だが、山狗は流石プロなだけあって、気配があるようには思えなかった。
 しかし、富竹はそれで判断する。
 いくら夜とはいえ、入江診療所内であるのに山狗の足音や気配が一つもないのはおかしい。……彼らは、意図的に自分たちの気配を隠している。
 そう、結論付けた。

「いいかい、鷹野さん。僕がこの部屋の窓を開けるから、そしたらすぐに駆け出して。……おそらく、この部屋の外……周辺にも山狗はいるだろうけど、そいつらは僕が何とかするよ」
「……! で、でも……それじゃジロウさんが……!」
 富竹と自分の二人で助かる。
 そうでなければ意味がなかったから、鷹野は廊下の時点での脱出を試みなかったのだ。
 富竹の言い分では、本末転倒だった。
「鷹野さんは……故高野一二三氏の夢を……鷹野さん自身の夢を叶えなくちゃだめだ。……そのために、君はここを無事に脱出しなければならない」
「そんなの駄目よ……! 私は、」
「鷹野さん!!」
 富竹は、声を荒げた。
 ……どうせ電気をつけているので場所はばれている。
 そう判断してのものだ。

「……いいかい。君は夢を叶えるためにここに来た。だから、生きてくれ」
「……で、でもっ……ジロウさんだって夢はあるでしょう!? 私だけの都合であなたを犠牲になんてできないわ!」
 鷹野が取り乱すと、富竹はふ、っと笑った。

「僕の夢は、『鷹野三四の夢が叶う事』だよ」

「……!!」
「……分かってくれるね?」

 ……鷹野は、瞳に一杯の涙を浮かべて、小さく頷いた。

 

 ガララッ!!

 突如、入江診療所、診察室の窓が乱暴に開く音が周辺に響いた。
 外からの監視をしていた山狗はそれにすぐに気づき、視線を集めた。

「こちら雲雀5。鷹野三佐、富竹二尉が二佐の診察室の窓より逃亡を開始した」
 ザザ、というノイズ混じりの電波が別の隊員のもとへと届く。
 廊下側で待機していた山狗は一部をその場に残して移動を開始。外で待機していた隊員は、疾走する鷹野をとらえようと行動を開始する。
「はぁっ、はぁ、はぁっ!!!」
 鷹野は、富竹に指示された通りに走った。
 わき目も振らず、ただ、まっすぐ……!
 この包囲網を抜けるには、曲がりくねった進み方をしている余裕などない。
 ひたすらに、まっすぐ進むしかなかった……!!
 だが、それは相手も承知していた。鷹野達の逃走路を断つため、鷹野の前へと立ちふさがろうとする。

「うぉおぉおお!!!!!!」

 そこに、富竹の拳が隊員の顔面を強襲した。
 遅れて飛び出した富竹は、すぐさま全力疾走を開始。鷹野の後から距離をつめ、追い抜き、立ちふさがった隊員に一撃をお見舞いしたのだ。
 鷹野は止まらない。富竹は自分を必ず助けてくれると言った。
 それだけを信じて、鷹野は……走った……!
 鷹野はまっすぐ前しか視線を向けなかった。ただでさえ暗いのだ。最初からほかを気にしたところで意味などない。
 ここは、自分の目よりも訓練をしてきた富竹の目を頼った方がいいに決まっている。
 自分にできる抵抗など、捕まってしまえば無いのだ。
 それは、鷹野が一番分かっていた。
 だから、走る。
 逃走という手段しかなかった。……逃走という手段しかなかったからこそ! 足を止めたらそこでゲームオーバーなのは間違いなかったから!!
 だが、山狗達も特殊部隊に身を置きながらたった二人を完全包囲から取り逃がすわけにはいかなかった。
 彼らには任務があった。プライドもあった!!
 だから二人の前へと立ちふさがる!!!

 それを、

 富竹は次々と破壊し進んでいく!!!

 誰が、何人集まろうと関係はない。
 今、この瞬間において富竹は最強のカードへと昇華された。
 鷹野三四を護り切る。
 その使命を全うするため、己の限界をも超えてすべての力をぶつけている!!!
 もう、止まらない。止められる者など居るものか!!!!
 隊員は武器を持っていた。富竹は武器など持っていない。
 ……否。
 富竹の武器は、その鍛え上げられた肉体だった!!!
 うなる拳は立ちふさがる隊員の顔面を砕き、腹部を貫き、横っぱらをなぎ払う!!!
 富竹を先頭に、鷹野は走る。
 富竹が敵をすべて倒してくれると知っていたから!
 富竹の言葉を心から信頼していたから!!
 走ることだけに集中する!!
 本来、鷹野と富竹では足の速さは違っている。
 だが、富竹は敵を打ち崩し、鷹野は走る事だけに集中する。
 つまり、鷹野がこの包囲網から脱出することにおいて、
 これ以上ないほどの陣形がとられていたのだ!!!!!
 そこに戦略はない。
 互いの信頼が生み出した、奇跡のフォーメーションだった……!!

 
「うぉりゃぁあああ!!!!!!」

 富竹の拳は、また一人の隊員を砕いた。
 きりもみ状態で吹き飛ばされる山狗達。
 それは、遅れて到着した……先ほど廊下で待機していた山狗達の目を疑わせた。

 こっちは、多人数で相手はたった二人なんだぞ!?
 それが、どうして!!
 たった一人の男にそのすべてが砕かれている!!!!!?
 どうして!? どうして奴らはこれだけの大軍を微動だにしない!!!?
 どうして……ぁあぁあ、どうして……!!!?
 人間ってのは、拳ひとつであぁも簡単に吹き飛ばされるんだよっ!!!!!?
 
 理解の範疇を超えていた。
 ……否。
 山狗に理解しろというのは無理だった。

 目の前で繰り広げられているこの光景は、

 奇跡以外の何物でもなかったのだから……!!!!!!!!

 それを理解しえるのは。
 互いに信頼という深い絆で結ばれた、鷹野と富竹以外にはありえなかったのだから!!!!!!!!

 天下無双の強さを見せる富竹は、立ちふさがる隊員をすべて粉砕して突進していく。
 五人に一斉に襲いかかられようとも、富竹は攻撃をよけ、その予備動作で肘鉄をみぞおちへたたき込み一人を撃破。
 そのまま、片足を軸にしてくるりと回転、ラリアットは一人の隊員の顔面を横から打ちぬき、回し蹴りが一人の隊員の腰へと炸裂する!!!!
 倒れる隊員を驚異的な握力と腕力で掴み、まるで斧のように残りの二人をなぎ払う!!!!
 掴んだ隊員は遠心力を利用してそのまま投げ飛ばし、……フィニッシュ。
 
 止まらない。
 何人で飛びかかろうとも、富竹は止まらない!!!!
 
 やがて、富竹と鷹野は包囲網の出口へとあと一歩までたどり着いた。
 もうすぐここから抜け出せる。
 もうすぐ助かる……!!

 ……安堵したのが間違いだった。


「……へっへっへっへ……。どこに行くんですかぁ、鷹野三佐。富竹二尉」

 闇夜の中から、小此木の声が不気味にこだました。

「どけぇえぇええ!!!!!!!!!」

 富竹は止まらない。止まることを知らない。
 すさまじい勢いのまま小此木に突進し、渾身の一撃を振りかざす!!!!!!!!

 ――が。

 小此木はそれを、軽く受け流し……富竹の腹へ一撃を叩き込んだ!!!!!

「がっ……は……!!!!」
 勢いがついていた。
 その進行方向とは逆から、すさまじい威力の拳が、富竹の腹に叩き込まれたのだ……!!!
 富竹はまったくの無意識のうちにしゃがみこんでしまった。
 その一撃は、鷹野と富竹にとって……あまりに絶望的なものだったのだ……!!
 富竹が、止まった。
 なら、私はどうするのか? 止まるのか?
 ……違う。
 走り抜ける。走り抜けなくてはいけない!!!
 だって。
 ジロウさんは約束してくれたから!
 私の夢を叶えさせてくれるって!
 私の夢は、

 <b>ジロウさんと生涯を共に過ごす事だから!!!!</b>

 だから、ジロウさんは絶対に死なない。これはお別れなんかじゃないんだから……!!!
 
 走った。
 走る以外の選択肢がなかったから。
 走らないという事は。
 富竹の決意に泥を塗ってしまう行為だと鷹野は理解していたから!!!!

 小此木は鷹野にも一撃を繰り出した。
 無慈悲に。冷酷に。
 山狗の隊長として鍛え上げてきた肉体、技術、そして経験は、富竹のそれをはるかに上回る。
 その、威力を、そのまま鷹野にぶつけたのだ。
 ……いや。
 「ぶつけようと」した。
 富竹は、小此木の足を掴み、思い切り手前へ引いた……!!
 いくら体格のいい小此木であっても、自分と同程度の体格を持つ男に注意が散漫になった足元をえぐられては、バランスを保つことなどできなかった。
 富竹は、最後の力を振り絞った。
 
 最終防衛ラインである、小此木をクリアすれば、もう……包囲網は抜けられる。
 そこが、出口だから……!!!
 自分の使命は何か?

 ……鷹野三四を、護り通すこと!!!!!!!!

 今は!!!
 それだけを考えろぉおぉお!!!!!!

 頭で判断したのではない。
 「意志」が判断したのだ。
 小此木を足止めしろ。
 それが、富竹ジロウが負った使命を全うするための最善策であると……!!!!!!!!!

 止まらない。
 止まれない。
 振り返る事ができなかった。
 ……ジロウさん。
 また……あとでね……?
 必ずだからね……?
 ……ジロウさん。


 
 ありがとう。

 


 鷹野は、包囲網を完全に脱出した。


 
 *     *     *


「こちら鳳1。富竹二尉の確保に成功した。……早急にH173を持ってこい。時間がねぇ」
 富竹は、最後の力を振り絞った後……動かなかった。
 いや……動けなかった。
 自分の体の許容範囲を越えた能力を使用したのだ。
 動けるはずがなかった。
 無抵抗のまま、小此木に顔面を踏みつけられ、けられ、頬は腫れあがっていた。
 そして、富竹に砕かれた隊員達が小此木の無線に反応してやってきた。
 自分を痛めつけた富竹への憎悪。
 今の山狗が持っている感情は、それだけだった。

 嫌な音が響く。
 鈍い音が響く。
 血飛沫が飛ぶ音が響く。
 指一本動かせない、無抵抗の男の……悲鳴が、響く。

「おい! そのくらいにしとけ!」
 山狗の隊員達を、小此木が一喝する。
「こいつで殺す前に死なせてどうする。それこそ取り返しがつかんぞ!」
 富竹は、わずかに残った意識で……小此木の持っているそれを目にした。
 それは……紛れもなく、H173の液体が入った注射器。
 ……それが、徐々に、自分の体へと迫り……。

 小さな痛みと共に、液体は……富竹の体内へと侵入した。

 叫びたかった。
 泣きたかった。
 これで自分は喉を掻き毟って死んでしまうだろう。
 梨花ちゃんの言うとおりだった。
 ……やはり、鷹野さんを説得して診療所へ行くのを止めればよかった。

 富竹の中で、さまざまな思いが交錯した。
 それらは脳内をめまぐるしく移動し続ける。

 
 だが……それらは、一掃された。

 ひとつの、思いの前に。
 一掃せざるおえなかった。


 鷹野さんは、無事に逃げきれた。

 

 ……よかった……。

 

 意識が遠くなる。
 ……もう、目は覚まさないだろう。
 ……ごめん、鷹野さん。
 君の願いは……どうやら、僕には……かなえられそうも、ない……。

 どうか……


 ……幸せに……なって……く……れ……。

 


 富竹は、瞳を閉じた。
 意識が、完全に閉じようとしていた。

 ……富竹は、最後に……願った。

 


 ……願わくば……また、鷹野三四という女性と……めぐり、逢えます……よう、に……。
 


 ……天へと願いを送り、富竹の意識は……完全に、なくなった。




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