あれからもう一週間が過ぎた。
とりあえず、ダムのことに関しては、俺があまりにもダム戦争について無知だったため、騒動はおさまった。
両親が驚いていたが、なんとかごまかすことができた。

そして・・・

「ヤベー!寝坊しちまった!!」
寝過ごした俺は、猛ダッシュでレナとの待ち合わせ場所に向かう。
「圭一く〜ん!早く早くー!」
「わ・・悪りぃレナ!」
レナと合流して、次に魅音の待っている場所へと急ぐ。
「しっかしレナ、別に、先に行っててもよかったんだぜ?なんで待ってたんだ?」
「え・・と・・私達が、仲間だから・・じゃ理由にならないかな?かな?」

・・・・・・・!
「・・へっ・・ありがとよ。」

そう。あれから一週間しか経ってないが・・俺には・・・最高の仲間ができたのだ!

「コラー!遅いよ二人ともー!」
「悪りぃ悪りぃ!文句があるなら昨日の特番に言ってくれー!」
「こりゃ罰ゲームものだねぇ」
「なっ!?そ・・そんな・・! レ・・レナ・・・!」
「圭一君はお寝坊したの。レナはずーっと待ってたのに。」
「そっそんな〜・・」
「圭ちゃん罰ゲーム決定。」
「うぎゃ〜っ!!」



走りながらそんなやりとりをしていると、いつの間にか学校に到着していた。
そして廊下、教室と進む。
「どーぞ圭ちゃん。」
魅音が扉の前で俺に先に行くように促す。
「・・・奴か・・・」
「がんばって圭一君!」

「私の手のひらで踊りなさいですわ・・!」

教室の中から声が聞こえる・・・上等だ!

「見たところ、扉に怪しいものはついてないな。」
「ふーん。じゃあ、さっさと開ければいいじゃん。」
「まて!扉になにも無いからって、うかつに開けるのはダメだ!扉が開いた瞬間に発動するトラップの可能性が高い!」
「ほほ〜う。 でも、それじゃ開けないことには始まらないよねぇ?」

「・・たしかにそうだな・・。」

よし・・・行くぜ・・!!

ガララッ!

勢い良く扉を開けた・・・その時・・!

バンバン!

「うおっ!?」
火薬がはじけるような音がした。爆竹か!?

「ぐあっ!!」

カラン カラン・・・
タライが顔面に直撃した・・・


「オーッホッホッホッホ!朝から元気ですわねぇ圭一さん!」

プチッ

「沙ぁぁぁ都ぉぉぉ子ぉぉぉ!!!」
そう叫び、俺は沙都子の襟首をつかんだ。
「いやぁぁぁ!ケダモノ〜!!」
「人様が聞いたら誤解するようなことを言うな!」
「離してくださいまし〜!暴力反対ですわー!」

暴力反対ねぇ・・よく言うぜ・・

「ほーう。そうかそうか。なら離してやるからカボチャをたらふく食え。」
「ふぇっ!?」
「それがいやならデコピンの刑だ!いっとくがすごく痛いぞ?クックック!」
「ふぇぇ・・!」
「さぁどっちだ!沙都子!!」
「ふぇぇぇぇん!圭一さんがいじめますわー!」
「ハッハッハ!さっさと選ぶが良い!沙都・・」

スパーン!!!!!

・・・すさまじい衝撃が・・俺を襲った。
俺の頬には・・あざ。

「さ・・さ・・沙都子ちゃん・・お・・お持ち帰りぃぃぃぃ!!」
か・・かぁいいモードの・・レナ・・
そして沙都子がこちらに向かって舌を出している・・・

「お・・の・・れぇ・・・沙・・都・・子めぇ・・」

ポフ。
なでなで。

「圭一、かわいそかわいそ、なのです。」
梨花ちゃんが頭をなでる。だが・・その表情は・・恐ろしいほどの笑みだった。
「梨花ちゃん・・君は俺を哀れんでいるのか?それとも俺の不幸を楽しんでいるのか?」
「にぱー☆」

・・・・・・・・・・。


こんな日常。
毎日毎日同じようなことの繰り返し。・・だが、飽きない。楽しい。
今の俺は幸せなんだろう。
仲間って・・本当にいいものだな・・・。







・・・そんな感情とは裏腹に、俺の中には暗雲が立ち込めていた。

「・・・五年前・・か。」

俺の中で、これだけが引っかかる。
説明がつかない事があるからだ。
まず・・俺は五年前、この村には来ていない。記憶にないのだから間違いない。
・・・・単に記憶が飛んでいるだけなのかもしれないが・・・。

・・・そして・・・。
「もう一人の・・俺か・・。」
そう。五年前に、今、この年齢の前原圭一が現れた。
容姿が同じ、ということは年齢も同じはずだ。
それは、物理的には説明がつかない。
仮に俺が雛見沢に来て・・・記憶を失ったとしても・・外見が今現在の俺であるはずがない。
「・・・どうなってるんだよ・・・。」

なぜ説明のつかないことが起こるんだ?
だいいち、なぜ昭和58年の俺が昭和53年にいるんだよ・・。
謎は深まるばかりだ・・・。
魅音も梨花ちゃんも俺を目撃している。
二人の人間が同じ見間違いをするとは考えにくい・・。

「う〜ん・・・・」

・・いかん・・そろそろ頭がショートしてきた・・・。
「・・・とりあえず今は考えるのやめるかぁ・・・・。」

カラーン  カラーン

授業開始の鐘が鳴った。








カラーン カラーン

放課後だ!さぁて・・

「さぁー!今日も部活タイムといきますかー!」

「「「「 おーーーー!! 」」」」

「圭ちゃん・・・朝の事・・忘れたとは言わさないよ!? 罰ゲーム上乗せのプレゼントをあげるからねぇ〜・・・。」
「そんなものはいらん!むしろ返り討ちにしてやる!」
「圭一さんには無理ですわ。」
「なんだと沙都子!!」
「圭一。部活で返せばいいのですよ。」
「そうだよ圭一君。」

「ちっ・・命拾いしたな。」
「それはこちらのセリフですわ。」

いちいちむかつく奴め・・・

・・・すでに罰ゲームが一つある以上、負けるわけにはいかないな・・・。

・・よし。

「なぁ魅音。」
「なにさ。圭ちゃん。」
「今日のゲームの種類、クジで決めないか? 一人が一つずつゲームを書いてそれを引くんだ。」
「えー、めんどくさいなぁ・・」
「ほー?自分で決めたゲームでなきゃ不安かよ?」
「・・・! 言ってくれるじゃないさ。よーし、そうしようじゃない。みんなー!」

よし。成功だ。
これで俺が圧倒的に不利になる確率は低くなった。
問題はどんなゲームにするかだな・・・
俺が必ず勝てるゲーム・・
そんな都合のいいゲームが・・・・・あった!
よし。
問題はこいつを引いてくれるかどうかだな・・・。

「よーし!それじゃあ引くよー!」

ガサゴソ。

「・・・・・これっ!」

どれどれ?・・・おっ!

「・・鬼ごっこ・・?」
「おー!来たか!」
「圭一君。鬼ごっこっていうと、鬼がどんどん変わっていく・・あれだよね?」
「ああ。でもそれじゃあ罰ゲームの対象者が決めにくいから、ルールは俺が決めるぜ?」
「ちっ・・まぁいいか・・。で?どんなルールよ。圭ちゃん。」

「まず、鬼は俺がやるぜ? いいな?」

「いいよ。それで?」
「まぁ、ルールって言っても、単純だ。俺が全員捕まえれば俺の勝ち。お前達は一人でも生き残ればそっちの勝ちだ。制限時間は30分。」
「ふむ。・・そんなルールでいいの?」
「まぁ、待てよ。ここからがミソだ。捕まった奴は、俺と一緒にほかの奴を捕まえてもらう。」
「なっ!?圭一さん!?そんなの誰も協力なんてするわけありませんことよ!?何を考えていますの!?」
「話を最後まで聞け。それでもし、捕まった奴が他のメンバーを捕まえたら、結果はどうあれ、罰ゲームを実行する側の人間になれるんだ。悪くない条件だろ?」
「・・それなら・・まぁ・・。」
「よし。このルールでいいな!?」
「うん。いいよ。」
「OKなのですよ。」
「いいよ圭ちゃん。」
「よーし・・じゃあ三十秒数えるから、さっさと逃げな!」
(クククク・・まんまとはまったな・・)

「1・・・・・2・・・・・・3・・・・」

「みんな、逃げろー!」

魅音の合図で全員が一斉に逃げた。
ふ・・どこに逃げようと同じことだ・・!









ハァ、ハァ、ハァ・・・
ここまで来ればOKですわね・・。
でも・・さっきから何かが引っかかりますわ・・。
圭一さんがルールの説明をした時から・・なにかが・・。
何が引っかかってるんですの!?
早く気づかないと・・!
・・・!!
あ・・!!
・・・か・・完全にはめられましたわ・・。
圭一さん・・あなたそんなに頭が回りましたの!?
相手の心理に漬け込んだ、いやらしいルールですわ・・!!
でも・・そうと分かったら早く実行しないと!






「圭一さん。」
「お?沙都子か。どうだ?すばらしいルールだろう。」
「まったくですわ。さ、早く捕まえて下さいまし。」
「OK。 ・・・なぁ沙都子。」
「なんですの?」
「一体どれだけの奴らがこのルールの穴に気づくかねぇ?」
「そんなのは知りませんわ。まったく・・よくあの土壇場で思いつきましたわねぇ・・。」
「何とでも言え。勝つためには手段を選ぶな・・・だろ!?」
「分かってきたようですわね。」








ふーっ・・・
だいぶん走ったね・・
20分経ったか・・あと10分・・。
もう誰か捕まってるかな・・さすがに一人、二人は捕まってるか・・。

ザッ

「・・!? 誰!?」

「魅ぃちゃん・・?」
「レナ・・。」
「魅ぃちゃん一人?」
「まぁね。でも鬼ごっこなんだから普通ばらばらに行動するでしょ。」
「そうだね。」
「そういう事だから、レナも早くどこかに行ったほうがいいよ。」

「・・そうだね。・・・もし・・・。」
「・・?・・・」

「もし・・レナが鬼じゃないのなら・・ね!」
「!!・・やっぱりそうだったのか・・!」

私は即座にその場から離れた。
逃げる。逃げる。

レナが追いかけてくる。

「アハハハハハハ!!魅ぃちゃん・・待ってよ・・。」
「ってレナ!?な・・何よその鉈は!?」
「アハハハハハハハ!」

「ひぃっ・・!!」


逃げて、逃げて、逃げる。
レナが来る。逃げなきゃ・・・。

「見つけたぞ!魅音!!」

・・!!
この声は・・圭ちゃん・・!!

「あーっ圭一君に見つかっちゃったよぅ・・。」
「あんなバカでかい声出してりゃわかんないほうがおかしいっての。」

くっ・・!前には圭ちゃん・・後ろにはレナ・・どうする・・?
簡単だ。前後がダメなら・・・・!?

「残念ですけど、左右もダメでしてよ。」
「みー。」

「沙都子・・!梨花ちゃん・・!あんた達も捕まってたの!?」

「当然だ!こうなるように俺が仕組んだんだからなぁ!!」
「な・・なんだって!?圭ちゃんが!?」
「・・・そりゃどういう意味だ。」
「みー。圭一はおバカさんだと思われてるのですよ。」
「はっ!そのおバカさんの戦略にみごとに引っかかった奴にそんなことを言われたくないね!」

「どうゆう事よ!?こうなるように仕組んだって!?」
「教えてやってもいいが・・・それは貴様を捕まえてからだ!覚悟しろ!魅音!!」

だめだ・・!逃げ道がない・・!捕まる!?

スパーン!!!!!!

圭ちゃんが吹き飛んだ。

「ぐはぁ・・・・・!!!!」
「ごめんね圭一君。レナも捕まえないと罰ゲーム受けちゃうから。魅ぃちゃん捕まえた。」

・・・・・・・・・。


〜数分後〜


「さて。種明かしをしてやるか。
まず、このゲームはある事に気づけるかどうかが重要になってくるんだ。」
「ある事?」
「このルールの穴ですわよ。魅音さん。」
「そう。この鬼ごっこのルールは、鬼に捕まってしまった人は別の人を捕まえれば罰ゲームが免除される。たとえ負けてもな。これが意味すること・・分かるかよ?」

「・・・・・!!・・そ・・そうか・・。」
「気づいたようだな!このゲームは鬼ごっこ。本来、お前達は逃げなければならない。・・だが!このルールのおかげで、逆にお前達はいかに早く俺に捕まるかを競わなくてはならなくなったんだ!!
なぜかって? 簡単だ!
まず、誰かがこのルールの穴に気づく。このルールの穴ってのは、さっさと鬼になった方がいい、という事だ。するとどうだ?他の奴も同じ事を考えてるのか?と思うようになる。
そうなったら、仲間が減って敵が増え、その中を逃げなければならない。自分にそんなことができるのか?・・・そう思うようになる!
ならば!ターゲットがまだ豊富なうちにさっさと鬼になり、罰ゲームを逃れる方が得策だと判断するようになる!
そうと決まればさっさと捕まった方がいいからな。
俺は楽に仲間を増やしていった、ってわけだ! お前らのことだから、誰かが必ず気づくと思ってたぜ。
だが、勝負好きの魅音の事だ。俺から逃げることだけを考えるのに集中しすぎて、絶対気づかないと思った、ってわけだ。
ちなみに、お前以外は全員罰ゲーム免除だ。
梨花ちゃんを捕まえようとしたらトラップコンボを喰らって・・・レナを捕まえようとしたら梨花ちゃんの萌え落としでレナが俺を弾き飛ばして梨花ちゃんの方へ行くし・・・魅音を捕まえようとしたら・・・・・・・。」

「つまりろくな目に会わなかった、ってわけね。」
「やかましい!とにかく朝の罰ゲームは免除させてもらうからな!!」
「・・?何言ってんの?圭ちゃん?」
「・・・・・・え?」
「朝の罰ゲームはこれとはまったく別だよ。あれはあれ。これはこれ。」
「・・・だ・・だったら!魅音の罰ゲームを無しにしてやる!それでどうだ!?」
「私はかまわないけど・・・他の連中がねぇ・・。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

「圭一さん?魅音さんの罰ゲームがなしなら私達は何のために協力したのか分かりませんわ。」
「ひ・・ひぃ・・。」
「観念するのです。」
「ひぃぃぃ・・・・。」
「圭一君・・・・    お持ち帰り〜っ!!!」

「うぎゃあああああああ!!!」

「アッハッハッハッハ!圭ちゃんいいねぇ!!」
「魅ぃちゃんもだよ〜はぅ〜☆」
「わ・・・ちょ・・レナ!?目がやばいって目が・・キャ・・キャアアアアア!!???」


こうして俺達はコッテリとしぼられるのだった・・・・・・。


「ちくしょう・・何のために勝ったのか分からねーぜ・・・・。」
「ま、私は道連れができてちょうどよかったけどね〜。」
「魅音んんん!!!」
「はぅ〜・・圭一君も魅ぃちゃんもかぁいかったよう・・☆」
「なぁ。レナ。」
「なぁに?」



「その鉈はなんだ?」



(まだ持ってたの!?)
「かぁいいんだもん☆」

「意味分かんねーぞ・・・。」


そうこうしてるうちに、魅音の家の前まで来た。
「じゃあね圭ちゃん、レナー!」

「おう、またなー!」
「バイバイ魅ぃちゃん!」


魅音と別れ、俺達は再び帰路につく。
「ねぇ圭一君。」
「なんだ?」
「手伝って欲しいことがあるんだけど・・いい?」
「ん?別にいいぜ。」
「じゃあ、明日、学校が終わったら、レナが迎えに行くね!」
「ああ。分かった。」

「詳しい事は明日話すね! バイバイ圭一君!」
「おう。また明日な!」


ふぅ〜・・・疲れた・・
長かったなぁ・・・今日一日。帰って寝るか・・・。

こうして俺の・・・とんでもなく疲れた一日は終わったのだった。


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