「ふぅ〜・・・まったく・・レナにはついて行けないな・・。」
俺の周りには見渡す限りのゴミ。
レナに「宝探しに行ってみない?」なーんて言われたから、少しは期待したのによ・・・。
あの時魅音達が笑っていた理由がわかったぜ・・・。

「はぅ〜☆新しい山ができてるよぅ〜・・・かぁいいよぅ・・☆」
「どこをどう見たらこれがかわいいと思えるんだよ・・・。」
・・・俺はこの場に前原圭一という死体ができるのを恐れたので、あくまで、小さく言った。
「あっちの方に行ってみよーっと! うふふふふ!」

「・・・本当に楽しそうだなぁ・・・。分からん・・何がどう楽しいのか全然分からん・・・。」
ゴミ山相手に奮闘しているレナ。
・・・・はっきり言って・・何も知らない人が見たらかなり異様な光景に見えるんだろうな・・・。
そんな失礼なことを考えながら、俺はレナの元へ向かおうとした。・・・が、しかし・・。

ズデーン!!

ゴミ山は思った以上に足場が悪く、何度も転んでしまう・・。
「・・いてて・・・。ちくしょう・・この前原圭一様がこんなゴミ供に負けてたまるかぁ!」

ガララ・・・ガシャーン!!!!

そう叫んだ瞬間、ゴミ山が崩れ、半分埋まってしまう・・・。
「・・・・おのれぇ・・こ・・これはここに捨てられた者たちの恨みの念か・・!??」
「圭一くーん!!大丈夫ー!?」
「ああ・・。なんとかな・・よいしょっと・・。」
「よかったぁー・・!」
「しかしお前、よくこんな足場の悪いところをひょいひょいっと進めるよな。」
「レナはここによく来てるからね。」
「そ・・・・そうなのか・・。」

・・・やっぱりそうか・・。こんな所に何度もねぇ・・。


今、俺達がいるのは、もともとダム工事の現場だったところらしい。
他の人の話によれば、俺はここでも何かやらかしたらしい・・・が。記憶に無い武勇伝ほど他人に話されて気味の悪いものは無い。
内容は詳しく聞いてない。と言うか、聞こうとも思わない。

・・・話を戻そう・・。
昭和53年。ここはとても騒がしかったところらしいが、今は不法投棄のゴミがたまってしまい、レナ曰く、宝の山になってしまったのだという。

レナは新たな宝(ゴミ)を求めてどんどん奥へ進む。
「おおい!待ってくれよ!レナー!!・・・うおっ!?」
俺の足元のゴミが、がらがらと音を立てて崩れ落ちる。
「畜生・・なんでレナみたいにいかねーんだ!?・・うわっ!!」
またしても転ぶ俺。
俺・・こことは相性悪いのかも・・・。
「圭一君はそこで待っててー!・・あー!これかあいいよぅ・・・あ!これも!はぅ〜☆」

レナはそう言い残し、どんどん奥へ進む。
ここには一人、俺だけが取り残されてしまった。
一人になると、あたりが急にシンとする。
・・・とても静かだ・・。
ここには車の音も・・塾の先生の怒鳴り声も無い・・。
本当に良い場所だ・・・。

カシャ

「!?」
突然、フラッシュがたかれた。誰かがシャッターを切ったんだ。
見るとそこには、めがねをかけた男性がいる。
「い・・いきなり何なんですか!あなたは・・!」
「はっはっは!ごめんごめん。久しぶりだね、圭一君。」

・・!この人は・・俺のことを知っているのか・・・。
「悪いですけど、俺、あなたの事は知りません。五年前に俺はここには来てないんでね。」
「・・・?・・・そうなのかい?」
「そうです。第一、体格が五年前のそいつと俺がまったく一緒だそうじゃないですか。そんなことありえませんよ。」
「・・・そう言えば・・そうだね・・。君は成長期だしね・・。姿が変わらないってのも変だ・・。」
「・・・あなたの名前・・教えてもらえませんか?俺、本当に知らないんで・・。」
「ああ、そうだったね。 僕は富竹っていう者で、フリーのカメラマンをやってるんだ。雛見沢には年に二、三度野鳥を撮りに来るんだよ。」
「富竹さん・・ですね。俺のことは・・自己紹介必要ですか・・?」
「前原圭一君・・だろ?」
「はい。分かってるならいいですね・・。」
「圭一君は写真は好きかい?」
「・・・無断じゃなければ・・。」
「はっはっは!ごめんよ。さっきも言ったけど、メインは野鳥の観察とかだから、許可を取ったことが無いんだ。」
「へー・・・。」
(俺の扱いは鳥並って事かよ・・。)

「夕日にたそがれる少年があまりにも絵になってたんでねぇ!」

カシャ カシャ

富竹さんはまたシャッターを切った。
「ちょ・・やめて下さいよ!!」
(何なんだよこの人は・・!!)

「圭一くーんっ!」
レナが呼びかけてきた。
「おーう!何だー!?」
「もう終わりにするからー!」
「分かったー!」

「・・・彼女はあんなところで何をしているんだい?」
それはこっちが聞きたいぜ・・。どう見てもゴミあさりだよなぁ・・・。
「さぁね。昔殺して埋めたバラバラ死体でも確認してるんじゃないですか?」




・・・何だ・・?
・・違和感・・。
全ての音が・・聞こえなくなった・・。
レナがゴミをあさる音・・ひぐらしの鳴き声・・風の音・・。その時・・全てが止まった・・。




「嫌な事件だったね。」





「・・・・・え・・・・?」
何だって・・?  富竹さんは・・何を言ってるんだ・・・?

「腕がまだ見つかってないんだろ?」

ドクン

何だ?

ドクン

「殺人現場はこのあたりらしいね。犯人はまだ一人捕まってないんだってね。」

ドクン
ドクン


ド ク ン・・・・・・。






「!!!!??」
何だ・・!?
今・・何かが頭の中をよぎった・・。一体なんだ・・? 分からない・・・思い出せない・・。

「あの・・富竹さん・・? それって・・・一体何の・・?」


「圭一君!おまたせ!」

レナが戻ってきた。
その瞬間・・・世界が音を取り戻す・・・。

「邪魔しちゃ悪いね。それじゃあ僕はもう行くよ。」
「あれー?富竹さん、圭一君とお話してたのかな。かなっ。」
「まぁね。それじゃあね。」
「・・・・・・・。」

バラバラ殺人・・?
富竹さんの口ぶりじゃ・・まるで雛見沢で殺人事件があったみたいじゃないか・・・。

・・そして・・・。


ナンダ?アノイワカンハ


まるで・・忘れていた記憶がよみがえった・・いや。
そんな生易しいものじゃない・・。

そう・・。腹を割いて中の内臓を無理やり引きずり出すかのような・・痛みと苦痛の入り混じった違和感だ・・。



・・・何が起こったのか・・俺の頭はすでにパンク寸前で、理解することができない。
その時の俺は本当にパニクッていた。
だから・・気づかなかった。 


「何じゃこりゃぁぁぁぁ!!!」

そこには・・大量のゴミの塊・・。

「圭一く〜ん☆」

「な・・なんだよ・・!レ・・レナ・・。」
「圭一く〜ん☆」
「だからなん
「圭一く〜ん☆」
「・・・・・。」
「圭一く〜ん☆」

「け・い・い・ち・く〜ん☆」

「・・・・分かったよ・・運べばいいんだろ・・!?・・畜生・・。」
「ありがとう圭一君!」
うわぁ・・すごい笑顔だ・・。
・・まぁいいか・・・。

「よいしょお!!」


グキッ



・・・その後俺がどうなったかは言うまでもなかろう・・・・。


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