「綿流し祭?」

授業が終わり、部活を始めようとした俺を他のメンバーが止め、こんな話をしだした。

「そう。雛見沢の一番大きなお祭りなんだよ!だよっ!」
「まぁ・・そんなにスゴイものじゃないけどさ。楽しみにしてなよ。」
「そうだな・・!このメンバーなら、退屈はしないだろうしな!」
「たいくつどころか!今年もやるぜぇ?わが部の夏の風物詩!綿流し四凶爆闘!!!」
「セ・・センスねー!な・・何だよそのネーミングは!!」
「レナはかぁいい名前だと・・思うけどな・・。」
「圭一もいますから、今年は五凶爆闘になりますです。」


綿流し祭。
何でも、雛見沢一番のお祭りらしい。
古出神社ってとこで行われて、何でも神聖な儀式をするんだとか。
へへっ!今から楽しみだぜ・・!

「で?そのお祭りはいつあるんだよ?」
「明日だよ。」
「明日!?」
「うん。明日。だから、今日はお祭りの準備があるんだよねー。」
「ってことは、今日は部活は無しって事か・・。」

「梨花ちゃんは巫女さんなんだよ! はぅ!」
「へー・・そうなのか?」
「みぃ☆」
「少しはお考えあそばせ。古手神社でお祭りがあるんですわよ?」
「そういや、梨花ちゃんの苗字は「古手」だったな。なるほど。」

「そこでみんなにお願いがある!今日の準備のお手伝い!いける人はいるか!?」
「レナは行けるよ!」
「私も行けますわ。」
「俺も問題ないぜ。」
「ボクは当然行くのですよ。」

「よし!それでこそ我が部のメンバーだ!よろしく頼むよみんな!」

「まかせとけ! あっと言う間に終わらせてやるぜ!!」



今日は土曜日だから、学校は昼までだ。
部活がないのなら、俺は帰ってすることなんて無いしな。
むしろ、お祭りなんて今まで勉強に追われていた俺からすれば久しぶりだ。
お祭りのために汗を流すのは、当然だ、とまで思った。

学校が終わり、家路につく。家に帰ったら速攻で着替えて、古手神社に向かった。
長い階段を駆け上がる。・・すると・・。

「おーっやってるやってる!」
こんな光景を見るのも久しぶりだな・・。

「おーっす!圭ちゃん。」
「魅音!おっす!・・・ちょうどいいや。何をすればいいか聞きたいんだけどさ、どうしたらいいよ?」
「ああ。それなら、公由のおじいちゃんに聞きな。圭ちゃんは新入りだから、特別決まった役割もないからね。」
「そうか。魅音は何をするんだ?」
「おじさんはちょっと行くところがあるんだよね。」
「そっか・・?まぁ、何をするにせよ、がんばれよ!」
「うん!じゃあね!」

そう言い残して魅音は走って行った。
公由のおじいちゃん・・・。
公由のおじいちゃん・・・。
どこかで聞いたような・・・・・・・。

「う〜ん・・。」

あ!

「村長さんじゃないか!」




やべぇ 村長さんの事忘れてた。 アハハ。



「いたいた!村長さーん!」
「ん・・?おお!前原君か!いやぁ、久しぶりだね!ダム戦争以来だ。」
「あー・・えっと。その事なんですけど・・・・。」

その後、村長さんに一から説明し、そして俺があの時の俺じゃない、という事を話した。
不思議そうな顔をしていたが、村長さんも考えをまとめて、普通に俺に接してくれた。

「そうか・・。君も大変だったね。 どうもこの村は不思議なことがよく起こるみたいだ。」
「へぇ・・。他にも何か起こってるんですか?」
「あ・・うん。いろいろ・・・ね。」
「・・・?」

どうしたんだろう・・。
急に無口になって・・・。

・・って。

「えーと、村長さん。」
「なんだい?圭一君。」
「本来の目的を忘れてました。俺、準備の手伝いに来たんですけど、どこを手伝えばいいのか聞きに来たんでした。」
「そうか そうか!そりゃけっこうだ!・・・それなら、テーブルにイス、あとテントを出してるはずだから、その辺を手伝ってやってくれ。」
「ハイ!分かりました。」

よっしゃあ・・!
やるぞ!

「圭一。」
「・・お?梨花ちゃんか。」

「・・・決してくじけてはダメですよ? 最後までやり通して、必ずここに帰ってくるのです。」

「・・??・・うん・・?分かった。がんばるよ。」

??何か、応援にしちゃ少しおかしくないか・・?
・・・まぁいいか。

「・・・それと。・・あなたは「いる」けど「いない」はずの存在に近い将来、出会うはずです。驚くでしょうが、受け入れるのですよ。」
「・・・ああ・・?」

「それでは、なのです。」

梨花ちゃん・・?
何の話をしてたんだ?
「・・・・まぁ・・いいか。」

少し疑問に思ったが、気にしてもしょうがないと思い、俺は手伝いに行った。
今日もひぐらしが鳴いている・・・。

明日が楽しみだな。
作業をしているときは、ずっとそう思ってた。




作業もひと段落し、休憩していた。
すると・・。

「圭一さーん!」
「ん・・?おおー!沙都子か!」
「お疲れ様ですわ。・・お茶でもどうです?」
「おお。サンキュー。」

ごく。  ごく。


ブーッ!!!!!



「ゲホッ・・!ゲホッ! さ・・・沙都子ぉぉお!!何入れやがった!」
「オーッホッホッホッホ!!私は何も入れてございませんことよー?」
「お・・おのれ・・沙ぁぁ都ぉぉ子ぉぉお!!」

「いやーっ!!ケダモ・・」
「うわっ!バカ!!学校ならまだしも、こんなところでそんな事を言うな!!」
「離して下さいまし〜!!ふぇーん!!」

わわっ・・・泣き出しやがった・・。
あれ・・。いつの間にかデコピンの体制になってるな・・。無意識にやってたのか。
これは自業自得じゃないのか?

「わ・・悪かった!ゴメン!だから・・な?・・泣くなよ・・。」
そう言いながら頭をなでてやった。いつもは乱暴になでるのだが・・、今回は回りに見ず知らずの人が多々いるからな・・。
泣かせちまってるのもあったので、優しくなでてやった。

・・・・だが・・。
不思議なことに、俺の事を白い目で見る人はいない。
ハタから見たら、男の子が女の子を泣かせてる。
・・・そう見られてもおかしくは無いはずだ。
・・・なのに・・。

「にーにー・・・。」

「・・え・・?・・・にーにー・・?」
「な・・何でもありませんわ!わ・・私も・・ごめんなさいですわ・・。いたずらが過ぎました・・。」
「・・?あ・・ああ。」

いやに素直になったな。
・・どうなってるんだ・・?






「圭一くーんっ!」
「おお。今度はレナか。おっす。」
「こんにちわですわ。レナさん。」
「こんにちわ沙都子ちゃん!圭一君も!」

「レナは何の手伝いをしてたんだ?」
「レナは今来たんだよ。みんなの分のさしいれを持ってきたの。」
「おお!!ありがとよ!」
「私もさっき来たばかりですわよ。」
「へ?・・・そうなのか?じゃあ沙都子には差し入れは必要ないな。」
「そ・・そんなぁ!梨花に家事をたのまれたのでそれをやってただけですわ!!」
「あー・・そうだったのか・・。ははっ悪い。」
「まったく・・もう。」
「それぞれ事情ってものがあるからね。」

・・・まあ、そりゃそうだ。

「私達も手伝うよ!ね?沙都子ちゃん!」
「もちろんですわ!何のために来たのか分かりませんことよ!」
「ははっ!頼もしい限りだぜ!」
「それじゃあさっさと終わらせてしまいましょう!」
「「おお〜!!」」

三人に増えた俺達は、てきぱきと準備を進めていった。
途中何度かトラブルもあったが、三人でクリアーしていった。
やっぱり仲間ってのはいいもんだ。
力を合わしたのって・・・これも久しぶりだな。
いや・・初めてかもしれない。小さい頃に誰かと協力したことはあったと思うが、覚えていない。

雛見沢村。
ここに来てからの毎日が楽しい。
まぁ、不思議なことも体験したが、それ以上に、俺にはかけがえのない仲間ができた。
他のどんなものにも変えがたい、大切な仲間達。

・・・そういえば俺は五年前にダム戦争を勝利へ導いたとか言われてたな。
俺はこの雛見沢に感謝しなければならない。
仮に五年前、俺がいたとするならば。

「俺・・なりふりかまわず・・突き進むんだろうな・・。」
「?何か言った・・?圭一君。」
「・・・何でもねーよ。」






「はぁー!終わった終わった!」
やっと終わったぜ。もう日が沈みかけてるなぁ・・。
「そういえば、魅ぃちゃんと梨花ちゃんはどこだろ?だろっ?」
「魅音は俺がここに来たときに会ったぜ。そのすぐ後に梨花ちゃんにも会ったぜ。」
「梨花は大切な会議があるから先に行くって言ってましたわよ。」
「大切な会議?梨花ちゃんが?」
「そういえば圭一君は知らないんだったね。」
「そういえばそうでしたわね。」
「・・何の話だ?」
「雛見沢はね、御三家っていう、三つの家が支配してる村なの。御三家っていうのは、公由家、園崎家、古出家の三つだよ。」
「なるほどね。古出家である梨花ちゃんは会議に出席して当然・・ってことか。」
梨花ちゃんの両親がすでにいないのは知っていた。
沙都子の両親もおらず、今は沙都子と一緒に暮らしているのも知っている。

「・・・ん・・?園崎家・・?」
「あら?知らなかったんですの?魅音さんも御三家の一員で、園崎家の次期頭首ですわ。」
「な・・なんだってぇぇぇ!?」
・・・・今日はよく大きな声だすな・・俺・・。

「魅音ってお偉いさんの家の娘だったんだな。」
「・・・それを知った圭一君はどうするのかな・・?」

「・・?どうするって・・。今までと同じように接するぜ?魅音が御三家だろうと何だろうと、関係ないだろ。あいつは俺達の頼もしい部長だろ?」
「うん!それでこそ圭一君だよ!」
「へっ!当然だ!!」


「あ!梨ー花ー!!こっちですわー!」
梨花ちゃんがこっちに走ってくる。
「みぃー!」
「あ・・。」

こけっ。
転んだ。


「みぃ・・・。」

涙目でこっちを見る・・。




「はぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」


「やばい!!梨花ちゃん!逃げろーっ!!!!」



「お持ち帰り〜っ☆」


「やめんか!!誘拐は犯罪だぞレナっ!!」
・・・ん?沙都子がいない・・・。
あのヤロウ・・逃げやがったな・・。
だが今はレナの暴走を止めるのが先だ!!

「み・・・みぃ〜っ!」

いかん!!レナの万力に梨花ちゃんが苦しそうだ・・!急げ!前原圭一!!

「レナ!!」
「なぁに?圭一君?梨花ちゃんはレナがお持ち帰りするんだよ〜☆」
「いいから聞け!レナ! いいか!実はー・・」



「はぁっ!はぁっ!」
どうやら逃げ切れたようですわね・・!!
あの状態のレナさんの近くにいると何をされるか分かりませんわ・・・!!
命がいくつあってもたりませんことよ!!

「・・・梨花・・ごめんなさい・・。」

私は梨花を見捨ててしまった・・。あぁ・・どんな顔して会えばいいんですの・・!?

ドドドドドド・・・


? 何ですの・・? この音は・・・。

ドドドドドドド・・!!



こっちに・・近づいて・・!!??

「はぅ〜っ!!沙都子ちゃぁぁぁぁん!!」
「レ・・レナさん!?」
「沙都子ちゃーんっ!レナお姉ちゃん来たよ〜う!」
「な・・何のことか分かりませんわ!!」



「だって圭一君が言ってたよ!?沙都子ちゃんが『レナにお持ち帰りされて○○して○○したいって言ってたぞ』って!」※○○の中にはお好きな言葉を入れてください




「そ・・そんな事言ってませんわ〜っ!!!」
「はぅ〜沙都子ちゃ〜ん☆」


「はーっはっはっはっは!!いい気味だなぁ沙都子!!」
「け・・圭一さん!?一体どうゆうことですのーっ!!?」
「あれー?レナから聞かなかったかー?」
「よ・・よくもあんな事を・・!!!」
「梨花ちゃん見捨てて逃げたやつが何を言ってやがる!!これは罰ゲームみたいなもんだぜ!!」
「ぐっ・・!」

・・!!
り・・梨花がこっちを見てますわ・・た・・助けてくださいまし・・!!



「お持ち帰りなのですよ☆」





「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




「お持ち帰り〜っ!!!」



・・・・今日は人を裏切るという事がどれだけ愚かな事か思い知らされた一日でしたわ。


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